「介護の仕事に興味はあるけれど、60代から始めるのは遅いのでは…」
「覚えることが多すぎて、自分にはできないかもしれない…」
そんな不安を抱える方は少なくありません。
ですが実際には、訪問介護を中心に60代・70代の方が多く現場で活躍しています。
厚生労働省の調査でも、訪問介護では4人に1人が65歳以上という結果が出ており、シニア世代が安心して続けられる仕事であることがわかります。
さらに、60代には人生経験の豊かさや落ち着いた対応力といった、若い世代にはない強みがあります。
利用者にとっては「息子や娘のような存在」として安心感につながることも多く、介護の現場ではむしろ大きなプラスになるのです。
この記事では、60代未経験から介護職を始めるにあたってよくある不安とその背景、訪問介護と施設介護の違い、無理なく覚えていく工夫、そして実際に働くメリット・デメリットや体験談をご紹介します。

「覚えられないかもしれない」という気持ちを、「自分の強みを活かして働けそう」という自信に変えるヒントを一緒に見ていきましょう。
訪問介護ではおよそ4人に1人が65歳以上

訪問介護の現場では、実際にシニア世代の職員が多く働いています。
「若い人でないと難しいのでは?」と不安に思う方もいますが、実際には60代・70代の方が現場で数多く活躍しているのです。
厚生労働省の「令和6年度 介護労働実態調査」によると、介護職員全体のうち65歳以上の割合は 14.9%。
中でも訪問介護では 24%、つまりおよそ4人に1人が65歳以上という結果でした。
一方、施設介護など訪問介護以外の職場では 10.9% にとどまっています。
つまり、介護職全体の中でも 訪問介護は特にシニア世代が活躍しやすい仕事 だといえるでしょう。
この数字は、「年齢を理由に介護の仕事をあきらめる必要はない」という大きな安心材料になります。

私の事業所でも約3割が65歳以上で、みなさんご自分のペースで活躍されています!
実際、未経験から60代で介護を始める方も多く、「同年代の仲間がすでに働いている」という事実は心強いはずです。
とはいえ、実際に働き始めると「覚えることが多すぎて自分にできるのだろうか」と不安を感じる方も少なくありません。
次はその原因と背景を整理してみましょう。
覚えられないのはあなただけじゃない ― その原因と背景

介護の仕事を始めた60代・70代の方が直面する悩みの一つが、情報の多さや環境の変化に対応することです。
しかし、これは決してあなた一人の問題ではありません。多くの未経験者が同じ壁に直面しています。
1. 覚える情報の種類が幅広い
介護現場では、利用者ごとに必要なケアや注意点が異なります。
- 服薬のタイミングや食事の好み
- 身体機能や持病に応じた介助方法
- 家の中の物の位置や使い方
これらを一度に覚えようとすると、誰でも混乱してしまうのは自然なことです。
2. 状況判断や臨機応変さが必要
介護はマニュアル通りにいかない場面も多く、その都度判断が求められます。
未経験者にとって、この“応用力”が最初の壁になりやすいのです。
3. 年齢による記憶のスピード変化
60代になると、新しい情報の定着に若いころより時間がかかることがあります。
これは能力が落ちたわけではなく、覚え方の工夫が必要になるだけです。
4. 環境や手順の変化に慣れる負担
訪問先や施設で働く場合、場所や利用者が変われば作業環境も変わります。
毎回慣れる時間が必要なため、覚える負担が増して感じられることもあります。
5. 心理的プレッシャー
「失敗してはいけない」という責任感や、「覚えが悪いと思われたら…」という不安が、かえって記憶の妨げになることもあります。
ここまででわかるのは、「覚えられない」と感じるのは決してあなた一人の問題ではなく、情報量の多さや年齢・環境の変化、心理的プレッシャーなど複数の要因が絡んでいるということです。
訪問介護と施設介護 :覚える量と慣れやすさなら訪問介護

介護の仕事には、大きく分けて「施設介護」と「訪問介護」があります。
どちらもやりがいがありますが、覚える量や慣れやすさには違いがあります。
未経験から始める場合、その差を知っておくことは大きな安心材料になります。
1. 覚える範囲の広さ✍️
- 施設介護
利用者が複数人いるため、生活リズムや介助内容、注意点が人によって異なります。
また、施設全体のルールや行事予定、設備の使い方なども覚える必要があります。 - 訪問介護
基本的に1回の訪問で対応するのは1人の利用者です。
その方の生活習慣や好みに慣れてしまえば、覚えることは絞られます。
2. 業務のパターン化📅
- 施設介護
日によってシフトや担当が変わり、業務の流れが変化することがあります。 - 訪問介護
毎週同じ曜日・同じ時間に同じ利用者を訪問することが多く、一度覚えた流れがそのまま使えるのが大きなメリットです。
3. 現場の環境🏠
- 施設介護
大勢のスタッフ・利用者と関わるため、チームプレーが重要です。慣れるまで人間関係や指示系統に戸惑うこともあります。 - 訪問介護
基本的に一人で対応するため、人間関係のストレスは比較的少なめ。
その分、自分のペースで落ち着いて覚えられます。
4. フォロー体制👫
- 施設介護
困ったときは近くに同僚がいるので、その場で助けてもらえる安心感があります。 - 訪問介護
基本は一人ですが、困ったときは事業所に電話で相談できます。
さらに、最初のうちは同行訪問があるので、その期間にしっかり覚えれば不安は軽くなります。
5. 覚えやすさの印象💡
- 施設は「同時にたくさんのことを覚える必要がある」ため、未経験者にとっては少しハードルが高め。
- 訪問介護は「1人の方に集中できる」ため、落ち着いて覚えやすい環境といえます。
まとめ
どちらが良い悪いではなく、覚えやすさ・慣れやすさを重視するなら訪問介護が向いていることが多いです。
特に60代未経験の方にとっては、「少しずつ覚えられる訪問介護」という選択肢は大きな安心につながります。

訪問介護は1対1のケアなので、比較的ゆとりを持ってご利用者さんに対応できるのもポイントです!
完璧じゃなくて大丈夫 ― 60代未経験でも安心の覚え方

「仕事を覚えられない」と感じるのは自然なことです。
でも、介護の現場で求められているのは“100点満点”の新人ではありません。
まずは外せないポイントを押さえ、少しずつ慣れていくことが大切です。
1. 70点を目指せば十分
最初から完璧を目指すと、覚える負担が一気に増え、心が折れやすくなります。
経験上、7割くらいできれば現場は回ります。
残りの3割は、働きながら少しずつ身についていくものです。
2. 外せないポイントは事業所にある
訪問介護の事業所には、利用者さんごとの注意点や、過去に起きたトラブル事例などのノウハウがすでに蓄積されています。
危険なポイントや利用者さんのこだわりなど、特に重要な部分は必ず共有してもらえるので、そこだけは優先的に覚えましょう。

経験値が増えていくと、どこで問題が起こりそうか、なんとなくわかってきます。
そういう部分は事前に必ずお伝えするようにしています。
3. 手順書とメモを味方にする
多くの事業所では手順書が用意されています。
さらに、自分なりに短くまとめたメモを作れば、記憶の定着が早くなります。
同行中や直後に思い出しながら書くと効果的です。

やっていく中で、自分なりに「何を」メモしておいた方が良いかがわかってきます。
私も、後で困らないようにメモはしておくようにしています。
4. 同行は“自分が一人でやる”つもりで見る
同行研修では、何を「見学」するかがポイントです。
「次は自分がこのケアを一人で行う」と思って観察すると、何を見ておかなければいけないか、だんだんわかってきます。
例えば、おむつ交換の現場に同行するとき、気を利かせて介助を手伝ってくださる方がいます。
もちろん助かるのですが、一番大事なことは「自分が一人でできるか」なので、見ることに徹した方が良いときもあります。
また、不安が残るようであれば同行を多めにしてもらえないか事業所に相談しましょう。

同行の目的は「仕事の引き継ぎ」なので、そこを「見て」おきましょう。
5. うまくいかないときは交代もできる
いろいろ工夫をしてみても、「どうしても上手くいかない…」というときはあります。
相性の問題で、他のスタッフに代わることで案外うまくいくこともあるので、無理せず相談しましょう。

現場が一つだけではないのが、訪問介護の強みです。
気持ちを切り替えて、次行ってみましょう!
6. 訪問介護は“慣れ”が早い
訪問介護は、基本的に同じ曜日・同じ時間に同じ利用者さんを訪問します。
そのため、何度も繰り返すうちに自然と流れが身についてきます。
現場が変わることもありますが、それも新しい刺激としてプラスに働く場合があります。

慣れるまでは緊張もしますが、基本的に繰り返しなので数回行けば慣れてしまいますよ!
7. 人手不足はあなたの追い風
介護業界は慢性的な人手不足です。
これは「即戦力じゃないとダメ」という意味ではなく、やる気のある人を歓迎する土壌があるということ。
60代未経験でも、現場はあなたを必要としています。

そもそも「仕事覚え」は重要なポイントではありません。
「誰かの役に立てれば…」というあなたの気持ちの方が、よほど大事です。
訪問介護のやりがいについてはこちらもご覧ください
👉【訪問介護は楽しい!】20年続けて分かったやりがい・メリット・向いてる人まとめ
60代で働くメリットとデメリット

介護職は年齢に関わらず挑戦できる仕事ですが、特に60代から始める場合には、他の世代にはない強みや注意点があります。ここでは、60代だからこそのメリットとデメリットを整理してみましょう。
メリット
- 人生経験・社会経験が活かせる
長年の仕事や生活で培った経験は、利用者とのコミュニケーションや対応力に直結します。
たとえば、人生経験豊富な60代は、利用者の気持ちや背景を理解する力に優れており、信頼関係を築きやすいです。 - 落ち着いた対応ができる
若い世代に比べて感情の起伏が穏やかで、急なトラブルや予期せぬ対応にも落ち着いて対処できます。
施設内でも訪問先でも、冷静さは大きな強みです。 - 生活リズムや健康管理に安定感がある
60代になると生活リズムが整っている方が多く、勤務時間や休憩の調整も無理なくこなせます。
また、健康管理や体調管理の経験があるため、無理せず働くことができます。 - 責任感や継続力がある
長年の仕事経験を通じて培った責任感や継続力は、介護の現場で非常に重要です。
「最後までやり抜く」という姿勢は、チームや利用者からも信頼されます。

60代の職員は利用者にとってちょうど息子や娘くらいの年齢になる場合もあり、安心感や親しみやすさにつながることも大きなメリットです。
デメリット
- 体力面の負担
介護は立ち仕事や移動、移乗介助など体力を使う場面があります。
若い世代に比べて疲れやすさを感じることもありますが、短時間勤務や業務の工夫で無理なく働くことは可能です。 - 新しい知識や技術の習得に時間がかかることも
資格や介護技術、ICTの操作など新しいことを覚える際、若い世代より時間がかかる場合があります。
ただし、繰り返し経験することで自然と身につくことも多く、焦る必要はありません。 - 若い世代との協働に戸惑う場面がある
職場によっては若手スタッフとのコミュニケーションで価値観やペースの違いを感じることもあります。
ですが、落ち着いた対応や経験に基づく助言が逆にチームにプラスになることも多いです。

これらのデメリットは、私の事業所でもきちんと配慮しながらお仕事をお願いしています!
60代から介護職を始める場合、体力面の不安はあるものの、経験や落ち着き、責任感などの強みを活かせることが大きなメリットです。
働き方や職場環境を工夫すれば、無理なく長く続けられる仕事でもあります。
体験談 ― 60代未経験で介護を始めた人の声

ケース1:65歳・元事務職から訪問介護へ
定年後にもう少し体を動かして働きたいと思い、介護の仕事に挑戦しました。
最初は覚えることが多くて不安でしたが、同年代の先輩スタッフが丁寧に教えてくれて安心しました。
訪問介護は一度に一人の利用者さんと向き合えるので、落ち着いて覚えられるのが助かります。
利用者さんから“娘のように頼りにしてるよ”と言われたときは、本当にうれしかったです。
ケース2:62歳・元専業主婦からパート勤務へ
長年家庭を支えてきましたが、子育ても終わり、自分の時間を活かして働きたいと思いました。
介護の知識はゼロでしたが、生活援助(掃除や調理)から始められたので無理なく続けられています。
利用者さんと一緒にご飯を作ったり、昔の話を聞いたりするのが楽しく、今では仕事というより“地域で役立つ時間”のように感じています。
今回は訪問介護での体験を中心に紹介しましたが、施設介護を選んで活躍している60代の方も多くいます。
自分の体力やライフスタイルに合わせて職場を選ぶことが、長く続けるポイントです。
よくある質問

Q1: 60代未経験でも本当に介護の仕事は覚えられますか?
A: はい、覚えられます。
最初は不安でも、訪問介護なら一人の利用者に集中でき、繰り返し訪問することで徐々に慣れていけます。手順書や同行訪問、メモを活用して無理なく覚えましょう。

私の事業所では65歳以上のヘルパーさんが約3割です。
みなさん元気に活躍されていますし、事業所の方でも配慮はしますので問題なく働けますよ!
Q2: 施設介護と比べて訪問介護は覚えやすいですか?
A: はい、訪問介護の方が覚えやすいと感じる方は多いです。
訪問介護は担当利用者が少なく、同じ曜日・時間に訪問を繰り返せるので、慣れるスピードが早いのが特徴です。
訪問介護のメリットについてはこちら
Q3: 記憶力に自信がなくても大丈夫ですか?
A: 大丈夫です。
すべてを完璧に覚える必要はありません。
70点くらいできれば十分で、重要なポイントだけ押さえていく形でOK。メモや手順書を活用し、分からないことはすぐに質問しましょう。
Q4: 60代でも体力的に続けられますか?
A: 訪問介護は施設介護に比べて身体への負担が少ない場合もあります。
また、無理のない働き方を選べるので、体調に合わせてペースを調整可能です。
体力面は現場のサポートも受けられます。

訪問介護は夜勤はありませんし、連続して身体介護を行うということもありません。
自転車移動の場合は、電動付きにするなどで負担軽減も可能です。
Q5: 最初は同行訪問が必須ですか?
A: ほとんどの事業所では同行訪問を設けています。
先輩スタッフと一緒に訪問し、業務の流れや注意点を学べるため、未経験でも安心してスタートできます。
訪問介護のよくある疑問についてはこちら
👉訪問介護の不安を乗り越えるには?よくある疑問に現役ヘルパーが答えます
まとめ:介護職は、60代こそ活躍できる場所

60代から介護職を始めるのは決して遅くありません。
実際に訪問介護を中心に多くのシニアが現場で活躍しており、「覚えられるか不安」という気持ちも自然なことです。
大切なのは、完璧を目指さず、できることから一歩ずつ取り組むこと。
人生経験や落ち着いた対応力など、60代だからこそ発揮できる強みは介護の現場で大きな価値になります。
安心して働ける環境はすでに整っています。
今日からでも遅くはありません。あなたの経験や思いやりが、介護の現場で大切な力になります。
⚫︎すでに資格をお持ちの方
→ 介護の求人をチェックして、自分のペースで働ける現場を探してみましょう。
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⚫︎まだ資格がない方
→ 初任者研修などの短期講座を受ければ、数か月ほどで現場に立てます。学びながら働ける職場もあります。
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